PROFILE
人物プロフィール
2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』で藤原彰子を演じ、2026年には上坂樹里さんと連続テレビ小説『風、薫る』でダブル主演を務めた見上愛さん。
俳優として大きな作品を任されるまでになりましたが、学生時代に思い描いていた将来は、女優ではなく舞台の演出家でした。
中学生のころに舞台へ惹かれ、高校では演劇部で脚本や演出を担当し、大学でも演出を学んでいます。
その途中で「演じる側」も知ろうと始めた演技が、やがて仕事になっていきました。
今回は、そんな見上愛さんの生い立ちや家族、学生時代、芸能界へ入ったきっかけ、女優デビューから俳優としての転機までをご紹介します。
見上愛の生い立ち|東京都で育ち、音楽と舞台に親しんだ子ども時代
見上愛さんは2000年10月26日生まれ、東京都出身です。
子どものころから体を動かすことや音楽に親しんでいましたが、最初から演劇だけに打ち込んでいたわけではありません。
3歳からバレエとピアノ、小学6年生で父からギターを教わる
見上愛さんは3歳ごろからバレエとピアノを習い、バレエは10代後半まで長く続けていました。
小学6年生になると、父親の勧めでギターを買ってもらい、父から弾き方を教わります。
最初に弾きたいと思った曲は、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の劇中歌「God knows…」でした。
父親がギターを弾き、家の中に楽器がある環境だったため、本人にとっても「音楽を始める」という決断は大げさなものではなかったようです。
中学・高校時代にはバンド活動をし、ギターとボーカルも担当しました。
映画『異動辞令は音楽隊!』では、自身のギター経験を生かして演奏シーンにも臨んでいます。
自然に音楽に親しんできたと思います
出典:ORICON NEWS「見上愛は阿部寛似!? 映画『異動辞令は音楽隊!』で父娘役 ギターの腕前も披露」(2022年9月3日)
小学生のころの夢は「日本の首相」。舞台や女優とはまったく違う将来像を思い描いていた時期もありました。
中学2年生の観劇で舞台の世界に夢中になる
演劇との距離が急に近づいたのは、中学2年生のころに舞台を観たことでした。
父親がチケットを手にしたことから家族で観に行ったのが、2014年の舞台『私のホストちゃん』です。
それまで2.5次元舞台になじみがなかった見上愛さんは、演目そのものだけでなく、観客が楽しそうに劇場を後にする様子にも惹かれました。
その後も舞台へ足を運ぶようになり、ある公演では夢と現実、過去と現在の行き来を照明だけで表現する演出に強く興味を持ちます。
もともと両親も観劇が好きで、見上愛さんが生まれる前から芝居を観に行っていました。
本人が演劇に興味を持ってからは、家族と一緒に舞台を観る機会も増えていきます。
観客として舞台を楽しむだけでなく、「どう作られているのか」という裏側へ関心が向いたことが、のちの進路選びにも表れました。
このころ考えていたのは、舞台の上に立つことより照明など演劇を作る側の仕事でした。
中学ではハンドボール部で活動しており、演劇に興味を持ってからも、すぐ俳優を目指したわけではありません。
見上愛の家族|父と兄の音響の仕事、母・祖母との音楽の思い出
見上愛さんが音楽や舞台を身近に感じていた背景には、家族との日常がありました。
父親、母親、6歳上の兄、祖母については、本人が複数のインタビューで具体的なエピソードを語っています。
父と6歳上の兄の存在が舞台の裏方への興味につながる
2021年のインタビューで、当時、父親と兄が音響関係の仕事をしていると明かしています。
兄は6歳年上で、子どものころからおすすめの映画を教えてくれる存在でもありました。
年齢が離れていたこともあり、兄が勧める作品には同世代の友人だけでは出会いにくい映画もあり、幼いころから少し背伸びをしてさまざまな作品に触れていたそうです。
舞台照明に興味を持った中学生のころには、自分が照明の仕事をすれば、いつか音響の仕事をする兄と一緒に働けるかもしれないと考えたこともあったそうです。
小学6年生で始めたギターも、きっかけを作ったのは父親でした。
小学生の運動会に父親が仕事の都合で来られず寂しかった記憶も後年のインタビューで語っていますが、普段の父娘関係についてははっきりと「仲良し」と話しています。
私は父とすごく仲良しなんです
出典:bizSPA!「見上愛21歳、大先輩との共演で学んだことを告白『雰囲気でみんなの士気が高まる』」(2022年9月11日)
成人した翌年の2022年1月10日には、本人&スタッフ公式Xで、前年の成人の日に父親と楽器を弾いて過ごしていたことも振り返っています。
「見上愛の実家はお金持ち?」という検索もありますが、父や兄の仕事、家族の音楽経験だけから実家の資産状況までは判断できません。家族については、本人が語っている事実と経済状況の推測を分けて見る必要があります。
母もバンド経験、祖母はピアニスト|音楽が身近だった家庭
音楽との接点は父親と兄だけではありません。
見上愛さんは、母親にもバンド経験があり、祖母はピアニストだったと話しています。
本人は、親戚にも音楽関係の仕事に就いている人が多かったと語っており、楽器を始めることが特別ではない環境で育ちました。
2022年のインタビューでは、父親は趣味でバンドを続けており、母親と兄にもバンド経験があると話しています。
そのため、見上愛さんが中学生になってバンドを組んだことも、家庭の中では自然な選択だったといいます。
両親は見上愛さんが生まれる前から観劇が好きで、中学生になって本人が舞台に興味を持ってからは一緒に観に行くことも増えています。
本人は、やりたいことに取り組めるようにしてくれた両親への感謝も語っています。
バレエ、ピアノ、ギター、バンド、そして観劇と、子どものころから一つの表現だけに絞らず、複数のものに触れていた家庭でした。
音楽だけでなく、舞台を観ることも家庭の中で自然に共有されていました。
一方で、家族が進路を一方的に決めたわけではなく、見上愛さんは自分で演劇へ関わる方法を探していきます。
見上愛の学生時代|ハンドボール部から演劇部へ、大学で演出を学ぶ
中学1年生から高校1年生の途中まではハンドボール部で活動していました。
観劇を重ねるうちに演劇へ関わりたい気持ちが強くなり、高校1年生の途中で演劇部へ移ります。
高校1年生で演劇部へ移り、寺山修司『犬神』に出演
見上愛さんが通っていたのは桐朋女子高等学校です。
2026年には、在学当時の演劇部顧問が高校時代の様子を振り返り、高校1年生の途中から演劇部へ入ったことや、文化祭ではバンド演奏もしていたことを明かしています。
演劇部へ移った初日には、次の大会へ向けた出演者オーディションが行われていました。
そこで渡されたのが、寺山修司の『犬神』の台本です。
人手が足りなかったこともあってオーディションを受け、そのまま出演することになりました。
学生演劇での最初の出演は『犬神』でしたが、これは2019年のプロとしての女優デビューとは別の出来事です。
高校時代には「高校生劇評グランプリ」に応募して入賞し、オリジナル脚本を書いたほか、観劇した作品の感想をノートへ書き留めていました。
演劇部では寺山修司だけでなく、別役実や野田秀樹の作品などにも触れ、本人も舞台をかなりの本数観に行っていました。
顧問から教わる一方で、戯曲を自分で読み、観た舞台について考える時間を重ねています。
俳優になるための部活動というより、演劇そのものをさまざまな角度から知ろうとしていた高校生活でした。
脚本・演出を担当し、演出家を目指す
『犬神』への出演後、演劇部では脚本や演出を担当するようになります。
途中入部した時点で照明や男役などの担当がある程度決まっており、空いていたのが脚本と演出だったことも一つの理由でした。
そこから戯曲を読み、舞台を観て、作品をどう作るかという側へ関心が深まっていきます。
高校時代に目指すようになったのは、女優ではなく演出家でした。
女優になろうと思ったきっかけ自体は、未だになくて。
出典:logirl「演出家志望だった見上愛。女優としての転機と葛藤」(2021年8月25日)
本人がこう振り返るのは、女優になる前に「演劇を作る仕事」を目指していた時間が長かったためです。
大学も、演出を学べる進路を前提に選びました。
中学3年生のころには、すでに進学したい大学を決めていたと後年の卒業報告で振り返っています。
高校3年でWESと大学受験を両立、日本大学芸術学部へ
高校2年生の冬、見上愛さんはワタナベエンターテイメントスクール(WES)のオーディションを受けました。
高校3年生の春からWESへ通い、大学受験の勉強と並行してレッスンを受けています。
同時に、演出家になるなら演じる側のことも知ったほうがいいという助言もあり、演出を学ぶための一つの経験として演技にも取り組みました。
高校卒業後の2019年には日本大学芸術学部演劇学科へ進学し、大学公式の卒業生ページでも「演出」の卒業生として掲載されています。
大学在学中に俳優の仕事が増えていきましたが、学業も続け、2023年3月に4年間で卒業しました。
卒業時の本人発信では、中学3年生で進学先を決めてから勉強を続けてきたこともあり、「必ず4年で卒業したい」という気持ちを持っていたと振り返っています。
仕事のスケジュールを調整した事務所や、学生生活を支えた家族への感謝にも触れていました。
入学した時点では自分が女優業をするとは想像しておらず、演出家を目指すつもりだったことも、卒業時に本人があらためて明かしています。
大学で演出を学ぶ時間と、現場で俳優として働く時間が並行する4年間になりました。
大学では俳優の河合優実さんとも知り合いました。
在学期間の多くは新型コロナウイルス禍と重なり、卒業時の本人発信では約3年間を主にオンライン授業で過ごしたことも明かしています。
見上愛さんのほうから声をかけて友人になったというエピソードもあり、仕事だけではない学生生活の一場面として本人のインタビューに残っています。
本人は、中高では芸能活動が禁止されていたこと、WESへ入った背景には大学のAO入試の受験資格を得る目的もあったことを後年のインタビューで説明しています。女優デビューだけを目的にした養成所通いではありませんでした。
演出家志望から女優へ|2019年デビューと俳優としての転機
WESへ入った時点でも、見上愛さんの将来像の中心には演出がありました。
ところが、演技を学んだことをきっかけに事務所から声がかかり、表舞台での仕事が始まります。
演技を学ぶためWESへ入り、ワタナベエンターテインメント所属へ
WESでレッスンを受けていた見上愛さんは事務所から声をかけられ、高校卒業後にワタナベエンターテインメントへ所属しました。
2019年6月には所属後の仕事として、sajiの楽曲『ツバサ』のミュージックビデオに出演しました。
高知で行われたその撮影は少人数で、キャストもロケハンへ参加し、自分でメイクをするような現場だったといいます。
もともと裏方として演劇に関わりたいと思っていた見上愛さんにとって、出演者とスタッフの境界が近い撮影は印象深い初期経験になりました。
「女優になるために演技スクールへ入った」という一直線の経歴ではなく、演出を学ぶ過程で演技に触れたことが芸能活動へつながった形です。
WES卒業後の見上愛さん本人に聞く「10の質問」の公式インタビュー映像も残っています。
2019年『ボイス 110緊急指令室』で女優デビュー
プロの俳優としてテレビドラマへ初出演したのは、2019年の日本テレビ系『ボイス 110緊急指令室』第7話です。
同じ2019年にはNHK『ミス・ジコチョー〜天才・天ノ教授の調査ファイル〜』にも出演し、映像作品での経験を重ねました。
2020年にはTBS系『恋はつづくよどこまでも』で、初めて連続ドラマのレギュラー出演を経験します。
大学では演出を学びながら、撮影現場では俳優として経験を積む生活になっていきました。
高校までに学んだ舞台制作と、大学で続けた演出の勉強を手放さずに、俳優としての仕事が増えていった時期です。
高校の演劇部ではすでに『犬神』の舞台に立っていましたが、学生演劇の経験と、事務所所属後のプロとしての女優活動開始は分けて考える必要があります。
「作り手」として学んだことが役に立っている部分はあると思います。
出典:週プレNEWS「寺山修司好きのカルチャー少女・見上愛『純喫茶のクリームソーダには“夢”が詰まってる』」(2019年10月21日)
演出や脚本を学んできたため、自分の役だけを見るのではなく、作品全体の中でその人物がどんな役割を果たすのかを考えていたと、デビューした2019年の時点ですでに話していました。
『きれいのくに』『衝動』で演技と主演の経験を重ねる
女優としての仕事が増える中で、本人がはっきり「転機」と位置づけている作品が2021年のNHKドラマ『きれいのくに』です。
その少し前には、のちに2021年公開となる映画『プリテンダーズ』で初めて映画撮影を経験していました。
本人は、監督が脚本だけに縛られず、その場で動いた感情を大切にする現場だったことで、「演技をする」という感覚に初めて触れたように感じたと振り返っています。
レギュラードラマで初めてメインの役を担当し、約3週間の稽古期間を経て、目的や衝動を一つずつ読み解きながら役を作っていく経験をしました。
見上愛さん自身が『きれいのくに』を「転機」と明言しています。
同じ2021年には、倉悠貴さんとのダブル主演映画『衝動』で映画初主演を経験しました。
演じたアイは声を出せない人物で、セリフに頼らず表現することに向き合う一方、主演として現場でどう振る舞うかも考えるようになったと振り返っています。
それまで先輩や主演俳優が現場で周囲へ気を配っていたことにも気づき、役を演じる以外の「主演としての仕事」を考えた作品になりました。
演技そのものだけではなく、作品を作る現場全体を見る経験が増えていきました。
『光る君へ』を経て『風、薫る』W主演へ
2024年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』で藤原彰子を演じました。
大河ドラマへの出演はこれが初めてで、藤原道長の娘として一条天皇へ入内し、物語の中で成長していく彰子を演じています。
一条天皇の中宮となり、まひろこと紫式部が仕える重要人物を長い時間軸の中で演じる役でした。
そして2026年、連続テレビ小説『風、薫る』で上坂樹里さんとダブル主演を務め、主人公の一人である一ノ瀬りんを演じました。
制作発表時には、『光る君へ』で見せた表現や存在感が起用理由の一つになったことも制作側から明かされました。
『光る君へ』での仕事を見た制作統括から出演をオファーされ、朝ドラで主人公を任される流れへ進んでいます。
学生時代に舞台を「作る側」から見ていた人が、長期間の物語を主演として担う立場になった作品です。
作品は2026年3月30日から全26週・130回にわたって放送され、9月25日に最終回を迎えました。
撮影は約1年に及び、2026年8月21日にクランクアップしています。
一ノ瀬りんの年齢が重なっていく長い物語の中で、本人は年齢の変化に合わせて少しずつ落ち着きを出すことを意識して演じたと振り返りました。
2019年のテレビドラマ初出演から7年後、見上愛さんは連続テレビ小説の主演を最後まで務めました。
高校時代に演出家を目指して選んだ演劇の道は、演じる側を知ろうとしたことで別の仕事へ広がり、2026年には朝ドラの主人公を演じるところまで進みました。
















